B) 3DCGのライトと現実のライトの違い
Difference between light of 3DCG and light of reality

3DCGのライトは、現実のライトを計算によって模しているに過ぎない、ヴァーチャルライトである。
よって、現実のライトと、かなり違う点が多い。それにはメリットもあり、またデメリットもある。
以下にそれらを記述していく。
 


1) 自然現象は起きない
 
 自然現象は”基本的に”起きない。

 ”基本的に”と書いたのは、
それぞれの要素を計算させるプログラム、
例えばラジオシティやレイトレースを設定すれば、できるからだ。

 それらを使うと、まるで写真のようなレンダリング結果が得られる。
実写との合成や、リアルなものを求めるユーザーには非常に有効だろう。

 しかし、一般的に3DCGソフトのデフォルトでは設定されていない。
では、なぜデフォルトで設定されていないのだろうか。
それは以下の大きなデメリットがあるからだ。

 「異常なくらいレンダリング時間が延びる。」

 ラジオシティなどは、その画面内に膨大な量の光を飛ばし、
その光に関する全ての要素を計算しているため、
例えば、ボールひとつのレンダリングに1週間かかっても不思議ではない。

 また、複雑な設定が必要な場合がある。

 その複雑な設定を正しく理解するためには、それぞれのパラメータについて
試行錯誤を要する。しかし、レンダリングのたびに相当な時間、待たされることになる。

 例え、まるで写真のようなレンダリング結果が得られるにしても
あなたは一週間、待てるだろうか。

 もし、レンダリング中に何らかの理由でPCが落ちたり、
ペットにいたずらされてコンセントが抜けたり停電したら?
あなたは、やり直す気力はあるだろうか。

 一般的な3DCGソフトのデフォルトで、自然現象を表現する設定が
なされていない理由はそこにある。

 さて、以下にその”デフォルトでは起きない”自然現象を記述する。

 なぜ、この知識が必要かというと、これらを知った上で、その特徴を掴めば
より簡単に、より速く、リアルなライティングを、工夫によって表現する事が、できるからである。



a)回折現象

光が透過しない物体の場合、その境界で折れ曲がり、陰側に光が進む現象。
これが起きないので以下の2点の表現は、代替表現になる。
 

1)影が距離によってボケない。

 実際の光は、影を落とす物体と、受ける物体の距離が遠いほど
ボケた影が落ちる。

 例えば、街中で電柱の影を観察してみて欲しい。
高いところの影ほど、地面に落ちている影がボケているのが解るだろう。

 rendoptでソフトシャドウを設定すれば、その効果を擬似的に得られる。
しかしこれも距離に関係なく、単に全ての影をボカすにすぎない。
 

2)バックライトを当てても、輪郭が明るくならない。

 3DCGの場合、被写体の真後ろからどんなに強い光を当てても
回折現象が起きないので、意味がない。

 バックライト用のライトをキーライトの対角線上に
水平に置くことで同じような効果を得ることができる。
 

b)屈折

 光が透過する物体の密度に差がある場合、その境界で光が折れ曲がる現象。
L-3の場合、隠し機能である追加質感設定の屈折率とレイトレースで表現可能。

・材質による屈折率 
真空(空気) ガラス 耐熱ガラス クリスタル ダイヤモンド
1.00 1.33 1.45 1.47 1.54 2.42

c)映り込み

鏡のように表面のつるつるした物体が、その周りの物を全て映し込む現象。

L-3の場合、物体のパレット設定で写り込みのパラメータを加えれば
擬似的に表現できる。この方法のメリット、デメリットは以下の通り。

メリット
背景の画像を物体の方に貼り付けるため、レンダリング時間が延びない。

デメリット
背景の画像を物体の方に貼り付けるため、それ以外の物は映り込まない。


2) 物理的制限がない

 3DCGにおけるライトは現実のライトと違い、物理的制約はない。
あるのは光源位置と光の届く範囲だけである。

 よって、以下についての制限はない。

a)数

b)位置

c)範囲

d)種類

e)色

f)明度



 a)数・・・いくらでも置ける。

 ただし、レンダリング時間が幾らかかっても良いならば、という条件が付く。

 実際の撮影では、光源の用意さえすれば、撮影自体の時間はさして変化はない。
しかし、3DCGの場合、光源を増やすごとに確実にレンダリングの時間が延びる。

 L-3で影ポリゴンを使う場合、平行光源1灯につき、元の約3倍の影ポリゴンが増える。
 

 b)位置・・・どこにでも置ける。

 これは3DCGならではである。必要ならば物体の内部においても良い。
また、キーライトの高さで、そのシーンの時間をおおまかに、イメージさせることも出来る。

時間と光の高さ
 
大まかな時間
光の高さ ほぼ水平 デフォルト 水平

 
 c)範囲・・・どんな大きさでも置ける。

 例えば、窓から差し込む陽光を受けて、部屋が明るくなっているのを
表現するとき、ラジオシティなどを使うと、レンダリング時間が異常にかかる。

 そこで、その代わりに光の差し込んでいる地面に点光源を置き、
部屋一杯に広げることで、レンダリング時間をそれほど伸ばさず、
グローバルイルミネーションを擬似的に表現することができる。

また、逆に以下のようなモノもある。

アイライト
キャラの目に光沢を入れるためだけのライト。
スポット光源を使い、ごく小さく強いライトをキャラの目に当てる。
これによって、キャラの意志の強さや純粋さなどを表現する。
 

d)種類・・・どんな光源でも置ける。

L-3の場合は、平行光源・点光源・スポット光源の基本3種である。
他にソフトによっては、

ラインライト(線光源)

エリアライト(面光源)

などもある。原理的には点光源を線状や面状に並べたものである。
 

e)色・・・どんな色でも使える。

ライトの色は、シーンの雰囲気や、キャラの感情を醸し出す重要な要素である。
以下に、演出上、知っておくと良い事柄を表にして提示しておく。

色温度
光は温度によって、色が変化する。
 
温度  低  中低 中高
青白
     

地球に降り注ぐ色
自然の光は、さまざまに変化する。
 
状態 朝日 夕日 月光
設定 フィルに青・ピンクを入れる キーに黄・赤を入れる フィルに青を入れる

感情
感情表現にライトを使う場合もある。
 
感情 怒り、ドキドキ感 悲しみ、恐怖
設定 キーに暖色系 フィルに寒色系

実際のライトの色
参考資料として実際のライトの色を、Lシリーズでの表記で書いておく。
 
ライトの種類↓ R G B
ハロゲンランプ 100 98 89
水銀灯 92 98 100
白熱球 100 93 80

 

f)明度・・・どんな明るさでも使える。

 L-3の場合、その色の明度によって、明るさが変わるというシンプルな仕組みである。

 白(100,100,100)が最も明るいと思われがちだが、
実は色の入力には1000でも入る。

 100以上になると、自動的にグロウ(光の溢れた状態)が現れ始める。
(グロウが出ない場合は、rendoptで設定)


ライティングTOPに戻る

ホームページのTOPに戻る